福沢幸雄と松田和子~白洲次郎と正子@高度成長期のような二人~
2012年 04月 17日
エピソード1 パリ
エピソード2 ウィーン
エピソード3 東京
三組の伝説の愛の物語を、女優の貫地谷しほりさんが訪ね歩くという形態です。
パリ編の、ジュリエット・グレコとマイスル・デービスの驚きましたが、
(ジュリエット・グレコ女史が御存命なのにも、吃驚)
ウィーン編のクリムトは逆によく知っていた話でした。
しかし、東京編。こちらも、凄かった。
レーサー・福澤幸雄とファッションモデル・松田和子の恋。
知らない御名前の二人だったのですが、母・弾正が、激しく反応!
「エエエエエエエェェェェエエエエエエ!この二人が恋人!!!」
福澤幸雄、リュー弾が取り上げる時点でお気づきでしょうが、
かの福澤諭吉の曾孫。まぁ、ユキチについては、特に思い入れはありませんけど(笑)
幸雄は、フランス大使館に勤めていた父とパリに声楽を学びに来て、彼と結婚した、
ギリシャ人の母とのあいだに生れます。
第二次世界大戦後、幸雄たち一家は日本に帰ってきます。
さて、六本木にある伝説のイタリアンレストラン「キャンティ」
ここが、まだ東京のトレンド発信基地だった時代。
幸雄は、オーナーの川添浩志氏と家族ぐるみで懇意にしていたため、
自分の家の食堂のように出入りしていました。
ちなみに、、この川添浩志氏。
祖父は後藤象二郎だったりします(川添家の養子となった)
ある日、友人と食事をしていると、目をひく美しい女性が、いました。
日本人として、初めてパリコレのモデルとなり、
ピエール・カルダンの専属モデルとして活躍中の松田和子でした。
幸雄は、彼女の席に座ります。この時、幸雄、高校生(爆)
松田和子は7歳年上。
しばらくして、和子の瀟洒な自宅に出入りする幸雄の姿が目撃されるようになります。
ギリシャ人を母に持ち、パリで生まれ育った幸雄は4か国語を話し、
子供の頃に(^^;)出入りするギリシャ人から手ほどきを受けて車の運転を覚えます。
ちょ、ちょっと、出会いのエピといい、早熟すぎるでしょ!
幸雄が自分の生きる道として選んだのはレーサーでした。
彼は、慶応義塾大学を中退し、フランスでレーサーの修業を積むことにします。
学業の傍ら、エドワーズの役員としてアパレル関係の仕事をしながら、
端正なルックスを活かし、モデルもしていた幸雄。
60年代、日本の若者がビートルズ熱冷めやらない頃、友人のミュージシャンに、
「ビートルズはもう古い。時代はローリング・ストーンズだよ」と助言。
キャメル色の革製のトレンチコートに身を包む彼もまた、トレンドリーダーでした。
しかし、彼が選んだのは、勝負がすべての厳しい世界。
ハーフであること(それは孤独にしてました)
有名な家の出身者であることも、レースの前では、なんら意味をなしません。
それらが意味しない世界であることに重きを置いた幸雄。
小学生のころ、日本に帰って、周りから受けたいじめは、彼を深く傷つけていました。。
深い孤独を抱え込んだ幸雄。しかし、強がってそういう面を見せることを嫌いました。
東京とパリで、逢瀬を重ねる和子と幸雄。七歳年上で、同じく世界で活躍する和子は、
おそらく、幸雄の素顔を知る数少ない人物だったのでしょう。
六本木のキャンティ店内にて
← これで、二十代。。。
早熟というより、老成の字句が浮かびます。
その後、幸雄は、チーム・TOYOTAの専属レーサーとして華々しく活躍します。
トップレーサーと日本を代表するファッションモデルの恋。
時代の先端を行くのような二人でしたが、その輝く時は長くは続きません。
1969年2月、テスト走行中の事故で、福澤幸雄死去(享年25歳)
松田和子さんは、前夜、まだ出かけず、うたた寝をしている幸雄を起こします。
幸雄は彼女を自宅まで送り、東京駅に向かいます。それが二人の永遠の別れでした。
「あの夜、私が、幸雄を起こさなければ・・・」
彼女はその思いを抱かずにはいられません。
その彼女が事故を知ったのは、その日の午後。幸雄の母親から電話でした。
混乱した彼女が、鎌倉の幸雄の実家に駆け付けたのは、通夜が行われた時でした。
キャンテイのオーナーの川添夫人の助言を受け、和子は、そのままパリに向かいます。
彼女は、この時期の記憶が欠落していると語っています。
眩しいほど輝いたふたり、その愛は短くもあり永遠に刻印されたものとなりました。
この二人を見て、「政治関連の話を抜いた、白洲次郎と白洲正子」のようだと思いました。
互いに独立していて、なおかつ互いを尊敬し、一番の理解者同士だった。
事故死した福澤幸雄が周りに与えた影響は大きかったようです。
そして、彼の存在は、様々な人々に文化的に時代的に日本の自動車レースの歴史として、
彼の死後も、深く影響を与え続けます。
事故死を巡る福澤家と隠ぺいを図ったかのように見えるトヨタ側との裁判やら・・・
彼をオマージュした作品の数々。。
高度成長期の真っ只中に駆け抜けたひとりの男と彼を愛した女性の物語。
心を打ちました。